映画「わたしを離さないで」

この物語のメッセージは「皆が思うより、人生は短いということ。その中で最も重要で、やるべきことは何なんだろうか?」ということです。 カズオ・イシグロ
原作者は「日の名残り」のカズオ・イシグロです。
20年も前にこの作品を書こうとしたものの納得がいかず二度挫折して三度目のトライで全編を書き上げたそうです。
若い人達が短い時間しか生きられないというシチュエーションで物語を書きたくて、20年間構想を練って出来た作品です。
はかない命をクローン人間という奇抜な発想を用いて描かれているのに驚かされます。
将来の希望もなく、重く悲しい運命を忠実に全うする姿が切ないです。

[原題]NEVER LET ME GO
[監督]マーク・ロマネスク
[キャスト]  キャリー・マリガン  アンドリュー・ガーフィールド  
       キーラ・ナイト 

イギリスの田園風景の中にひっそりと立つ寄宿舎は外界から閉ざされています。ここで一緒に暮らして心を通わせたルースとトミーとキャシーの3人の物語です。寄宿舎では絵や詩の創作やスポーツに励み、お行儀よくのびのびと日々を過ごしました。
18歳の時には寄宿舎を出て3人は農場のコテージで共同生活を始めます。
恋人同士となったルースとトミーですが、寄宿舎時代からキャシーとトミーは想い合っていたのです。
複雑な心境のキャッシーですが、内に秘めた聡明さ、落ち着いた振る舞いは切なく美しいです。


やがてコテージを出て与えられた使命を果たすために3人は離れ離れになってしまいます。
それぞれが過酷な定められた運命に逆らわずに懸命に生きていきます。
10年後、再開の時が訪れました。運命を共にしたかけがえのない3人の心が寄り添った時、、、すでに残された時間はあまりにも短かく、昔の思い出をよすがに使命を全うしていくのです。
切なく物哀しい映画でした。これが現実ではなく作られた物語であることが救いでした。